〒573-0075 大阪府枚方市東香里1丁目24-7
TEL 072-852-1033







はじめに

当院で診察をさせていただき、手術適応症例と判断した症例のほとんどは私と看護士で可能です。
しかし、
@当院の設備で不可能な場合
A獣医師4名以上で手術に挑んだり、厳重な術後管理が必要な場合
 (2名までは応援要請で来てもらえます)
などは設備が整った動物病院、多人数でその症例数をより多く経験している動物病院を
ご紹介しています。しかし、年間でその数は片手で数えるほどしかありません。

「○○専門でないから」と言って治療や手術を安易にお断り(投げ出す)するのではなく、
@なぜ当院で出来ないのか?
Aなぜ紹介先の動物病院が勧められるのか?
を十分お話しさせて頂いてからしかるべく施設に転院していただきます。

開業当初は椎間板ヘルニアさえも設備不十分で不可能でした。
しかしあらゆる設備を整え、他の先生の手術を勉強しに見学に行ったり
、研究会に出席したりすることで、出来ないことを極力無くしたつもりですが、
それでもゼロにはできません。ゼロに近づけるために獣医師は日々勉強が必要です。

ここで出来ること、出来ないことの見極め。これも獣医師に求められる資質となっていると思います。

下記の症例集ではチョット驚く写真もあると思いますが、苦手な方はご遠慮ください。

@胸腰部椎間板ヘルニアに片側椎弓切除術
A角膜潰瘍(穿孔)に結膜皮弁被覆術
B橈尺骨遠位端骨折にプレートとスクリューに内固定術
C膝蓋骨内方脱臼整復術
D皮膚の重度の熱傷に湿潤療法を行い皮膚の再生を実施
E皮膚肥満細胞腫

@胸腰部椎間板ヘルニアに片側椎弓切除術

ミニチュアダックスの椎間板ヘルニアは比較的多く診察する事が多いです。

椎間板は背骨と背骨の間にあるクッション材のようなもので、
クッションの中には髄核と呼ばれるゼリー状の物質があります。(図解)
その髄核がクッションを突き破って出てくると脊髄神経を圧迫し麻痺を起こします。

突然の起立不能を主訴に来院される事が手術対象になりますが、椎間板ヘルニアの
疑いを持つ動物全体の10〜15%程度です。85〜90%は内科療法(お薬や安静)で
ほぼ回復します。

手術適応症例と判断されれば、飼い主様と十分なご了解を得た後、MRIを撮影します。
当院では迅速にMRIを撮影可能な動物病院数施設と
密接にコンタクトをとっていますので撮影、手術まで何日も待たされることはありません。
なおかつ病変の部位の特定、MRI画像では重症度もある程度判定できます。
従って手術後回復がどの程度期待できるのかが分かります。

 

MRI撮影時間に私の手が空いている時は私が撮影施設までお連れしますが、
撮影時間が診察時間や別の手術や往診に当てられている場合は飼い主様に連れて行って頂きます。
このように撮影し確定診断後、速やかに当院にて手術を行うことができます。

 

写真は手術中(片側椎弓切除術直後(左)と脱出髄核除去後(右))の写真です。
髄核を取り除いたあとでは、脊髄神経の色が暗赤色から白色に回復したことが分かります。
この症例は術後2週間のリハビリを経て歩行が可能になりました。

従来は「深部痛覚消失後48時間以内に手術をしなければ回復が望めない」という意見がありました。
しかし48時間を超えて手術をしても回復することが多く、学会、学術誌ではその議論が今でも活発に
行われています。

治療経験の中でもたしかにそう思うのですが、「発症後すみやかな手術」は「回復を早める」事に
繋がると言えると思います。
遅くてもダメというのではなく、早ければ早いほど良いと思われます。しかし、内科療法が
ダメだから手術すればいいかなーという安易な判断をする病気でもありません。
手術をしても回復が見られない症例があることも事実です。場合によっては『進行性脊髄軟化症』
という取り返しのつかない病態に進んでしまい、死に至ることもあります。

まだ多くの賛否両論の意見がある病気ですが、一つ一つ飼い主様の疑問を解消しながら
治療を進めたいと思っています。


A角膜潰瘍(穿孔)に結膜皮弁被覆術

シーズやパグなどに非常によく見られる目の傷害に角膜潰瘍があります。



写真は黒目の膜である角膜が穿孔(穴があいてしまう)し、眼球の内部が一部
脱出してきている状況です。ここまで進行する前にご来院頂ければよかったのですが、
「目がシバシバしてから3日ぐらい」だったそうです。こうなると、点眼薬での治療は
難しく、最悪の場合、全眼球炎をおこし視力だけでなく、眼球をも失うことになりかねません。



緊急手術として、「結膜皮弁被覆術」を実施しました。白目の結膜を剥離し黒目の角膜に
移植し髪の毛より細い縫合糸で縫いつけます。

この手術法のメリットは
1,術後に眼球の状態が観察できる
2,眼球を治癒させるための治癒因子を移植した結膜の血管から
 供給させるため穿孔部分の治癒が早い
というところです。

施術後、3週間で抜糸を行い、余分な結膜皮弁を切除します。
それから2,3週間点眼治療を行い終了となりました。

B橈尺骨遠位端骨折にプレートとスクリューに内固定術

 

小型犬の橈尺骨遠位端の骨折は多く見られ、外科手術による内固定を行うこともあります。
写真はヨークシャーテリアに対し5穴のプレートに直径2mmのスクリューを使い固定しました。

 

術後4週間程度で癒合(骨同士が接合)したので、プレートを取り除きました

C膝蓋骨内方脱臼整復術

 

膝蓋骨(膝のお皿)脱臼の一例です。お皿の収まる大腿骨の滑車溝というレールが浅いためにおこる
病気です。右足の膝蓋骨が左と比較して大きくずれていることがわかります。



滑車溝を再建し関節包を再形成しました。この症例ではこれだけの手技で
完治しましたが、まだ手術内容を追加したりする症例もあります。



術後の写真です。左と同じような位置に戻っていることが分かります。

D皮膚の重度の熱傷に湿潤療法を行い皮膚の再生を実施

重度の熱傷で来院されたワンちゃんでした。

(1)皮膚は受傷後5日目で脱落しました。この間抗生物質を大量投与し、輸液を継続することで
  感染症を防止していました。全身状態が落ち着いたところで全身麻酔下で壊死した皮膚を切除しました。

 

(3)スーパーライザーを照射し、切除部位を乾燥させないため軟膏を塗布しシートで
   覆いその上から包帯をする事で受傷部位をしっとりさせ修復因子をより多くとどめます。

 

(4)ここまで皮膚が再生したところで退院となりました。



皮膚移植や皮膚形成術を考慮しましたが、費用面、手術の成功率などを考え、時間がかかるけども
安全で体の負担の少ない湿潤療法を選択しました。


E皮膚肥満細胞腫

皮膚に出来たデキモノ(腫瘍)が命にかかわる。人間では頻発しないことが、動物ではよくおこります。
その中で代表的な物が「肥満細胞腫」です。



この腫瘍は命にかかわるだけでなく、摘出の際取り残しがあると、術創が離解(くっつかない)
する現象がおこるため、摘出には十分なサージカルマージン(正常な組織も十分に摘出)が必要です。

この症例は直径29mmの肥満細胞腫で自壊していました、細胞診と遺伝子診断により悪性度が高いと判断し、
また術後の分子標的療法など内科治療により良好に経過するのでは?とお話しし手術となりました。
最大限のサージカルマージンを確保しました。腫瘍辺縁から30mm、底部は筋肉を一部切除しました。

 

縫合は減張縫合法を用い、離解することなく術後2週間で抜糸しました。



術後、抗癌剤治療と分子標的療法を行いました。
1年半後も元気に過ごしていました。